津波浸水予想区域図は、過去の房総沖大地震で発生した津波を基に作製。内陸部のどこまで津波が押し寄せてくるかをシミュレーションで予測する。房総沖大地震で有名なのは、江戸時代の元禄地震(一七〇三年、M8・2)。震源は房総近海。海溝型巨大地震だ。房総沿岸に最大八メートルの波高の津波が押し寄せ、多数の犠牲者を出した。県では元禄地震による同区域図はすでに作製しているが、今回は元禄地震と同様、大きな被害を出した房総沖を震源とする延宝地震(一六七七年、M7・4)も新たに加え、シミュレーション。川からの津波のさかのぼりや、整備が進んだ防潮堤・防潮林の効果も考慮して同区域図を見直すこととした。
市町村では同区域図の提示を受け、津波ハザードマップを今年度中をめどに作成する。避難対象地域を定め、避難対象地域外に避難場所を設定。さらに、同地域内にある避難可能な高台や避難ビルとして指定される鉄筋コンクリート造の二階以上の建物と、避難対象地域の住民がそこに向かうための避難経路も記入する。
一方、「実際に使えるマップが欲しい」との声を受け、マップづくりに住民も参加してもらうため、県は「DIG」という手法を導入する。住民が避難経路について意見を出し合い、決めていく一種の図上訓練だが、住民自身が避難場所と経路を体で覚えることができるという。
きょう三日、いすみ市で実施される津波訓練ではマップづくりに住民が参加。一部では、決めた経路で実際に避難ビルまで逃げる訓練も体験してもらう。
県消防防災課では「津波は“水の壁”が襲ってくるようなもので、ヒザ高までの津波でも身動きがとれなくなる。その津波には高い所に逃げるのが最大の防御。住民がどこに、どのように逃げるかを理解していないと、逃げ遅れてしまう」と津波ハザードマップの重要性を訴えている。
◆房総沖大地震
江戸時代に房総沖を震源域とする巨大地震としては、慶長地震(一六〇五年、M7・9)、延宝地震、元禄地震が知られ、「房総三大地震」と称される。いずれも相模トラフの線上付近で発生した、関東大震災と同じ海溝型地震。銚子から上総・安房の沿岸にかけ大きな津波被害をもたらせたという(伊藤一男著「房総沖巨大地震」、崙書房)。
独立行政法人・防災科学技術研究所によると、関東大震災(一九二三年)タイプの地震再来周期を約二百年とすると、おおむねその前半百年は静穏期、後半百年は活動期に分割。巨大地震発生前の七十―八十年の間にM7級の直下型地震も伴っているという。関東大震災から約八十年が経過。まだ静穏期で巨大地震は先だが、直下型地震の心配を始める時期に入ってきたという。
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