────2009年10月1日────
新政権のもとで建設中止が現実味を帯びてきた八ツ場ダム。
しかし、「止めた方が高くつく」などの議論による逆流も生まれています。
「無駄なダムは中止を」の国民の意思を、どう実行すべきなのでしょうか。
国土交通省は、「建設を中止すると、ダム本体工事関連の約620億円は不要になるが、千葉県など1都5県がいままでに支出してきた約1460億円を返さなければならず、差し引き約840億円の新たな負担が国に生じる」としています。
しかし、この議論には様々なごまかしがあります。
そもそも工事を続けた場合、本体工事関連事業が、あと620億円で済む保証はどこにもありません。
たとえば東京電力への減電補償(※東京電力は八ツ場ダムの上流で発電のために取水していますが、八ツ場ダムに水をためるためには東電に取水量を減らしてもらう必要があり、そのための補償金が「減電補償」です)は、50%の取水制限を行った場合、直接関係する五つの発電所の影響額が、1年分だけで17億円、30年分で510億円にもなります。 ところがダム総事業費4600億円のうち減電補償などに充てる「特殊補償」枠の予算は217億円にすぎず、300億円近く足りません。
このほか地滑り対策費の増加も予想され、工事費は1000億円程度増えると言われています。
これらを考えれば、たとえ都県にお金を返したとしても、止めた方が国の支出は減ることになります。
しかも、国交省が返さなければならないと言っている1460億円の中には、国からの補助金(約570億円)も含まれています。
これは、もともと国のお金ですから、地方に返す必要はありません。
また、国交省は国の収支だけしか見ていませんが、国が都県に返したとしても、そのお金が住民にたいして有効に使われれば、まったく問題はありません。
いま一番大事なのは、町と住民の暮らしの再建です。
ある住民は、調査に訪れた日本共産党の塩川鉄也衆議院議員(北関東ブロック)にたいして、「総選挙後、いつの間にか、ダム湖がないと生活が破滅するという流れになってしまったが、ダムはいらないという人は各地区にいる。このまま進めても完成まで何年かかるかわからないが、いま中止すれば生活再建はすぐに始められる。
頭を切り替えて、中止後の再建策を考えた方がいい」と語っています。
塩川議員は「地元の生活再建を先延ばしにしてきた国の責任は問われなければいけない。おわびの気持ちをきちんと示し補償を行う必要がある。ダム建設中止を前提に、地元の声と知恵を集めた地域振興を国がしっかりやっていくよう求めていく」と述べました。
八ッ場ダム建設:国交相中止明言
江戸川改修促進同盟、意見書を提出へ
────千葉 毎日10月2日付────
◇国に意見書を提出へ 前原誠司・国土交通相が建設中止を明言している八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)について、江戸川流域の自治体で構成する「江戸川改修促進期成同盟会」(会長、根本崇・野田市長)は近く、国交省や衆参両院議長に、情報公開と必要性の再検証を求める意見書を提出する。
計画上、発生するとされる毎秒2400立方メートルの洪水の処理策を国に問い、安全確保を求める。
同盟会は、江戸川沿いの1都3県の13区市町の自治体で構成。治水事業の整備促進などを国会議員や関係省庁に要望してきた。
国交省は、民主党議員の質問主意書に対し、答弁書で「1947年のカスリーン台風の洪水流量はダムがあっても変わらない」と回答。
これが現政権の建設中止の理由のひとつとなっている。
意見書では、答弁書が「過去に起きた31の洪水パターン中、29パターンでは、ダムは流量調節効果を有する」と答えている点を強調。
「一つのパターンでダムを不要とするのは早計」と主張し、「効果がある29パターンすべての情報を開示し、下流域の住民の安全安心のために治水効果を検証してほしい」と訴えている。
────【橋本利昭】────
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