■教育問題について
次に教育問題について伺います。
「教育日本一」を公約に掲げた森田知事が誕生して一年、知事主導のもとで、歴史に逆行し憲法の理念にも反した教育を千葉県に持ち込む動きが、にわかに強まっていることに対し、心ある多くの県民が憂慮の声をあげています。
かねてより「愛国心の普及」を唱えてきた知事に対し、我が党は、知事就任早々の昨年6月議会で、国民を侵略戦争に駆り立てた戦前の教育をどう見るかについて質しましたが、知事は「戦前の教育は、必ずしも一面的な教育であったとは認識していない」と、これを擁護する答弁を行ないました。
同じ6月議会で知事は、千葉県教育委員会の新しい委員に、野口芳宏氏を任命しましたが、その野口氏は、知事と同じく「日本教育再生機構」なる団体の代表委員をつとめる人物でした。「日本教育再生機構」とはどういう団体か。
日本による侵略や加害の事実をいっさい認めようとせず、侵略戦争への反省から始まった戦後教育を「自虐史観」に立った教育だ、などと攻撃している団体です。
戦前の日本を賛美し、アジアへの侵略戦争を正義の戦争だったと描く歴史教科書の採択を画策している団体です。
歴史に真正面から向き合って、事実を正しくとらえること、他国に侵略して深い傷を与えた国が、その過ちをきちんと反省すること、この真摯な姿勢がどうして、自分を痛めつける自虐史観になるのか。
知事もそういう立場なのか、お答え下さい。
私は、この団体が推奨する教科書、いわゆる「新しい歴史教科書」を読んでみましたが、実にひどいものです。
例えば、南京大虐殺や従軍慰安婦、強制連行など、加害の事実には口をつぐんだまま、あの戦争はアジア解放のための戦争、自存自衛の戦争だったなどと描いています。
こうした教科書が持ち込まれ、侵略の歴史を偽って『誇るべき歴史』だなどと教えられたら、これは単なる歴史認識の誤りにとどまらず、アジアと世界で生きていく子どもたちの前途に重大な影響を与えかねません。答弁を求めます。
このほど発表された「千葉県教育振興基本計画」素案では、「真の国際人」の育成がうたわれていますが、歴史偽造の教育で、どうして「真の国際人」が育つでしょうか。
自分の国が過去に犯した過ちの事実を正しく認識すること、侵略戦争への反省と平和への決意から出発した戦後国際社会の原点と、その後の歩みをきちんと理解すること、こうしてこそ、「真の国際人」が育つのではありませんか、知事の認識をうかがいます。
ところが、千葉県の教育は全く逆方向に走り出そうとしています。
昨年9月、知事の肝いりで「千葉県の教育を元気にする有識者会議」なるものが設置されましたが、そこにも日本教育再生機構から人が送りこまれ、驚くべき議論が行なわれました。
例えば、その再生機構代表委員の百地章氏は、子どもたちの元気がなくなったのは、「戦後教育そのものに原因があった」「伝統を否定し軽視するような、あるいは自虐的な歴史観、これが郷土や日本人としての誇り、自信を喪失させた」、「道徳の否定や軽視」、「愛国心の喪失」などが、子どもたちを荒廃させ、元気を奪った原因だ、と述べ、だから、道徳や愛国心教育が必要なんだと、結論づけています。
これはとんでもない議論です。
いったいこどもたちから元気や誇りを奪い、いじめ不登校、中途退学、等々、教育を重大な困難に追い込んできた本当の原因は何か。
貧困と格差拡大という弱肉強食社会の歪み、国際社会からも批判されている過度の競争教育、カネに汚れウソがまかり通る政治の世界の道徳的退廃など、それこそ戦後の自民党政治そのものがもたらしたものではありませんか。こどもたちに元気を明るさを、というのであれば、この大元をこそ正すべきです。お答え下さい。
有識者会議の議論を受けて策定がすすむ千葉県教育振興基本計画の素案には、道徳だとか、元気だとか、郷土や国を愛し誇りに思う心だとか、武道、礼儀、奉仕といった言葉がことさらに強調されていますが、それらが「戦後教育が間違いで、戦前の教育は正しかった」とする逆立ちした歴史観と結びついて持ち込まれることは絶対に許されないことを、強く指摘するものです。
さらに、計画(案)が、以上述べた歴史観にかかわる問題を含むその一方で、環境に従順に適応できるいわゆる「人材づくり」を目指している問題も重大です。
これは、中央の財界団体がかねて各種の提言等で繰り返し提唱してきた、財界のための人づくり戦略と、ウリふたつです。
計画(案)に頻繁に登場するボランティアや体験学習が、自主的自発的なものではなく、強制的なものであったり、あるいは成績評価の対象などにされた場合、たちまち歪んだものになりかねません。
本来、教育がめざすべきものとは全く異質のものです。教育は「人格」の完成をめざす崇高な営みであり、財界への「人材」提供の手段ではないことを強調しておきます。
最後に、計画(案)には、行き届いた教育条件の整備という、教育行政がめざすべき一番重要な課題について、具体的な数値目標がすっぽり欠落しています。
今、県行政がやるべきことは、教職員の手厚い配置、少人数学級の促進、教育費父母負担の軽減や学校施設の充実、特別支援教育の充実などで、思い切った前進をはかるべきではありませんか。
知事の明快なる答弁を求めます。
■貧困ビジネスについて
最後に、いま社会問題になっているいわゆる「貧困ビジネス」について、伺います。
失業者やホームレスを自らが運営する無料低額宿泊所に入所させ、無断で生活保護費の振込口座を作って保護費を天引きで横領していた事件や、2億5千万円もの使途不明金が発覚した事業者など、貧困に付け込んで生活保護費などをむさぼる貧困ビジネスの実態は、驚くべきものです。
県内でも逮捕者が出る、また刑事事件に至らなくても、例えば、市役所が便宜を図り、生活保護の支給日に、市役所の別室で天引きの作業をやらせるという信じがたいことが起きています。
これは、生活保護法にも違反する重大問題です。
私たち日本共産党は、こうした状況があることが分かったその場で指摘をし、すぐに改善されることになりましたが、こんな重大で、しかも指摘すればすぐにでも改善できるようなことさえ、県は、掌握もしていなければ、指導もしていませんでした。
まず、こうした事態について、どう認識しているのか、伺います。
また、全県的な点検を行い、行政自らが法に反して業者に手を貸すようなことがないようにすべきだと考えますが、どうか。
無料低額宿泊所の生活環境は劣悪を極めています。
6畳間を板で仕切って一人畳2畳分に、荷物も入れて生活をさせているなどというのは珍しくありません。
2DKの間取りを仕切って5人も詰め込まれているところもあります。
仕切りの板の上の方は開いているため、隣どおしの音は筒抜けでプライバシーはまったくありません。
クーラーも供用です。これではストレスがたまるのは当たり前で、怒鳴り声が飛び交い、いじめも珍しくありません。
こんな居住環境でも、住宅扶助費の限度額46000円が事業者に支払われています。
県は、こうした劣悪な居住環境について、どう認識していますか。
また、こうした状況を認識していながら改善を促そうともしていませんが、指導を強化すべきではありませんか、お答え下さい。
宿泊所で提供される食事もひどいもので、ある入所者の話では、朝食はウインナー2本漬け物2切れ、ご飯と味噌汁、夕食は給食業者の調理済みのパックを暖めただけ、給食業者が休みの日曜日は、カップラーメン1個の時もある。にもかかわらず、1日2食で月に29000円も取られています。
その方は、「こんなことなら、300円のお弁当を買った方がよっぽどましだ」と言っていましたが、弁当を買おうが、外食をしようが、29000円をとられる仕組みになっていますから、施設で食べるしかありません。
施設内就労と称する労働条件もひどく、寮の賄いを手伝っている入所者の賃金は時給728円で、これは、千葉県の最低賃金そのものです。
こうした食事の内容や就労条件について12月議会の常任委員会では、「知りえていない」とか、「調査していない」などと答えていますが、入所者の生活の基本を把握していないで、指導するといっても説得力はありません。福祉事務所のケースワーカーなどとも連携して、入所者から直接状況を把握するなどきめ細かな作業が必要だと思いますが、どうか。
そもそも、こうした宿泊所への入所は短期が前提です。
県のガイドラインでも「施設は一時的な使用が想定されているものであって、事業者は、利用者に対して、利用開始後3カ月以内に自立させるよう指導すること」とされています。
ところが実態は、1年以上の入所者が7割以上をしめ、5年以上住んでいるというのも2割にも上っています。ほとんど、自立できていないのが実態であり、ここの改善が必要です。
長期入所者が大多数を占めている現状を、どう認識していますか。
事業者が入所者に自立や就労支援を強める必要があると思いますが、県として、どう事業者を指導しているのか、伺います。
貧困ビジネスがはびこる中で、市川市の取り組みが注目されています。
市が、みずから自立支援住宅を8戸確保し、公園や河川敷などホームレスの居場所を毎週巡回指導しています。
健康相談所も市内に2カ所設置して、週1回、看護師も配置して相談に乗っています。
そこではシャワーにも入れるようにしており、訪れた人に喜ばれています。
県も、市川市の事業に対して一定の補助金を出していますが、県内自治体のセーフティーネットを充実、拡大させるために、他市町村にもこうした取り組みを広げる努力をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
いま起こっている貧困ビジネスの問題の背景には、生活保護行政の不十分さがあります。
ケースワーカーの人数も少なく、都市部では一人のケースワーカーが被保護世帯80世帯を担当するのが基準になっているのに、100ケースを超えて対応しなければならないワーカーが少なくありません。これでは、本格的に保護世帯を支援しようと思っても、出来ないのは当然です。無料低額宿泊所の入所者の6割が自治体からの紹介になっており、自治体が劣悪な環境を認識していながら、施設を頼らざるを得ない状況になっている最大の要因もここにあります。
しかも、市川市の話では、自立支援施設に入った人の多くがアルコール依存症やうつ病などの症状があり、実際就労できるのは1割程度だと言っています。
このことは、いま必要なのが、狭い意味での生活支援や就労支援だけではなく、福祉や医療の全体で、総合的に支援をすることの必要性を物語っています。
貧困ビジネスやホームレスの問題を根本から解決していくためには、生活保護行政を充実させる以外にありません。
老齢加算の復活など保護費の増額とともに、日常生活や就労を支援できる十分な体制を確立することが欠かせないと思いますが、県の認識はどうか、伺います。
貧困ビジネスがはびこるのは、何よりもそこに貧困があるからです。
構造改革路線により格差と貧困が拡大されてきたところに最大の要因があり、今こそ、この路線の転換が急務です。
正社員が当たり前の社会、安心して長生きができる社会を作り、格差と貧困そのものを解決すること、ここにこそ根本的な解決の道があることを厳しく指摘し、以上、第一回目の質問といたします。
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