同社は1991年、県と木更津、君津、富津、袖ケ浦市と民間企業などが出資して設立。国際研究開発拠点として県が推進するかずさアカデミアパーク内のホテルやホールなどが一体となった「かずさアカデミアセンター」の運営を手掛けてきた。運営資金は同パークに立地した企業が出資する無利子貸付金「建設運営協力金」が中心となる見込みだった。
だが同日、会見した相原社長らによると、企業誘致が進まなかったため、協力金は予定額45億円の5分の1の9億円にとどまった。創業以来18年間連続赤字を計上。不足分を毎年、3~5億円の県の貸付金などに依存していたが、ホテルの建設資金調達などで多額の借入金もあり、資金繰りが悪化。07年度は売り上げ26億5千万円、08年度は28億2千万円で、2カ年とも約1億数千万円の赤字を計上した。08年度末の累積債務は約130億円。
────千葉日報1/26────
かずさアカデミアパーク破綻:現場ルポ
雑草に覆われた区画 /千葉
◇目を引く巨大施設
館山自動車道木更津北インターから車で10分弱、木更津市西部の丘陵地を切り開いた巨大な土地区画が出現する。総面積278ヘクタールのかずさアカデミアパークだ。民間企業の工場や研究施設も建つが、売り出し中の立て札のある雑草に覆われた区画が目に付く。
その一画に、目を引く巨大建築がある。県所有のホールと、第三セクターが建設した「オークラアカデミアパークホテル」やスポーツクラブの複合施設だ。
メーンのホールは700席で6カ国同時通訳設備があり、国際会議もできる。ホテルには天井高6メートルの大宴会場があり、一流レストランを集めている。中庭には人工池が配置され、池の中心まで散策用のガラス張りの廊下が延び、華やかだったバブル期の贅(ぜい)を尽くした印象だ。 森田健作知事は昨年11月、進出検討企業を集めた現地視察会に出席するため現地を訪れた。その際、企業担当者に「東京駅から東京湾アクアラインで50分ほど。タヌキが出るなど自然いっぱいで、仕事のあとに緑豊かな場所で骨休めできる」と売り込んだ。
アカデミアパークは現在、半分近い区画で企業進出のめどは立たず、いったん契約を結んだ企業の中でもバブル崩壊後、進出を見合わせる動きが相次いでいる。 かずさアカデミアパークが構想されたのは1984年。県は99年の長期計画でもバラ色の未来を描いた。
<パークを中心に研究機関の集積、ネットワーク化が進み、国際的水準の研究開発が展開される……豊かな自然に恵まれたリゾート環境の中で、高度情報通信網を活用した自然共生型オフィスなど新しい就業形態の受け入れ体制を整備する……>
現状は夢からほど遠く、県民に巨大なつけが回ってきそうだ。
────【森有正】毎日1/27────
かずさアカデミアパーク破綻:県損失最大60億円か
歴代社長は県職員・OB /千葉
57億円余りの負債を抱えて経営破綻(はたん)した第三セクター「かずさアカデミアパーク」を巡り、県が最終的にかぶる損失は出資金や貸付金、金融機関への損失補償で計約60億円に上る可能性がある。同社の歴代社長4人は今の相原茂雄氏を含め、全員が県から送り込まれた職員かOBで、同社は事実上県の「出先機関」。バブル時代に立てた県庁の甘い計画のつけは、最後は県民が血税で支払うことになりそうだ。
────【倉田陶子】────
県企業立地課によると、同社の資本金97億5000万円のうち県は35・9%の35億円を出資した。今の相原社長の前職は県水道局長で、それ以前の3人の社長も県の現職か退職者だ。同社は債務超過に陥っており、出資金の回収は困難とみられている。
一方、県の同社への貸付残高は、計17億3900万円。その大半は、債務超過で金融機関から借り入れできなくなった05年度末以降、県が同社の経営を支えるため毎年度3億~5億円ずつ運営資金として貸し付けたものだ。
さらに同社は、04~05年度に金融機関から借り入れた10億8000万円のうち、8億6000万円を返済していない。同社への融資条件に従って県は一般の「連帯保証人」と同様、金融機関から損失補償を求められる可能性がある。
損失補償する自治体は、出資した県と木更津、君津、富津、袖ケ浦4市で、県の負担割合は約91%。残高を全額補償することになれば、7億8000万円の県費が投じられることになる。 同社の再建の先行きは不透明だが、森田健作知事は「自立した会社に生まれ変わることを期待したい」とコメントを発表しただけで、60億円を県が負担する場合の責任の所在には言及していない。
────毎日新聞 2010年1月27日 地方版────
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