2年目の森田健作知事の存在感が、100万票を得て知事の座に就いた滑り出しのころに比べて希薄だ。昨年度前半は、与党だった自民党の人脈を生かして公約の東京湾アクアラインの値下げを実現する一方、知事選期間中も同党支部代表を務めていた「完全無所属詐称問題」で論議を呼び、良くも悪くも県民から注目された。昨年夏の自民から民主への政権交代あたりが、境目だろうか。
「自民党」をキーワードに、森田県政の軌跡を振り返り、今後を占う。【森有正】
「私の最大公約は東京湾アクアライン値下げだ」。09年3月31日午後、首相官邸。森田健作氏はあいさつもそこそこに、当時の麻生太郎首相にまくしたてた。「値下げは千葉だけでなく首都圏全体の活性化につながる」
知事選の投開票日から2日後、正式に知事に就く5日前の間げきを突く陳情だったが、首相は特に深く考えるふうもなく言った。「国土交通大臣に検討するように言うよ
」 面会をセットした菅義偉・自民党選対副委員長や、実川幸夫衆院議員(千葉10区、肩書はともに当時)ら同席者は「値下げが政治案件に浮上したな」と思った。
森田知事の「通行料値下げは国策(国費)で」という主張がネックだった。要望を4月正式に受けた金子一義国交相は「森田さんの公約だ。県が一定の負担をするなら考える」と、やんわりはね返した。この時点で首相から指示はなく、同じころ本州四国連絡道路の値下げ要望もあり、アクアラインを特別視する理由はなかった。
値下げにこだわる知事のもと県は国と水面下で協議を開始。一つの「解」として、値下げの原資を実質国と県で折半する社会実験方式が浮上する。
その成案を5月下旬提出した知事は、国交相から「いい案だ」とほめられ、得意の絶頂だった。「国策で」というセリフは「とにかく前進させることが大切だ」に変化した。
麻生氏に国会議員時代かわいがられ、菅氏とはほぼ同じころに初当選。金子氏とも旧知だ。時間がかかると思われていた値下げの8月スピード実施について、森田知事は「衆参(自民党議員時代)の“ぞうきん掛け”が生かせた。ラッキーだった」と振り返る。
就任直前の果敢な首相直訴でひょうたんから駒を出した森田氏。威力を発揮した「自民党の出自」が、県内では思わぬ波紋
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