採択状況をみると、新たに東葛飾東部、夷隅、安房の3地区が東京書籍の採用を決めた。各地区の採択協議会では、育鵬社の歴史教科書を推薦する委員もおり、8月5日に開催された船橋市地区の会議で、委員から「国民として知ってほしい事項や文化遺産、人物などを取り上げている」と評価する意見が出された。この委員は、東日本大震災からの復興のためにも、「次代を担う若者に日本を好きになってもらい、誇りを持ってもらわなければ、達成できるかどうか分からない」と、歴史教育の重要性を強調した。同地区は「地域から世界や現代社会を考えようといった、発展学習への配慮がされている」などとして、教育出版を採択した。
一方、公民教科書については、東京書籍が13地区と最も多く、日本文教出版(船橋市地区)、教育出版(香取地区)、帝国書院(県立千葉中)がそれぞれ採択された。
千葉県の公立中学校における教科書採択について(談話)
2011年9月1日
全教千葉教職員組合中央執行委員長
高橋成悟
千葉県教育委員会は本日、2012年4月から県内の公立中学校(県立千葉中を含む)で使用される教科書の採択状況を発表した。9教科15種類の教科書採択状況には前回から若干の変更はあったものの、懸念されていた「自由社」「育鵬社」の歴史・公民教科書を採択した地区はなかった。
全教千葉教職員組合はこれまでも、歴史の真実を歪め、特異な歴史認識と愛国心を押しつけようとする2社の教科書がはらむ問題点を明らかにしつつ、真理と真実を記述し、憲法と子どもの権利条約の理念を踏まえた教科書を子ども達に手渡すため、全力をあげて運動を進めてきた。よって、今回の採択結果は県民の願いに沿った妥当な結論であるといえる。
千葉県ではこれまで、森田知事によって「日本教育再生機構」との関わりが深い人物が教育委員に起用され、愛国心を中心とした異常なまでの「道徳教育」への固執がみられるなど、教育への不当な介入が問題となってきた。また、千葉県は全国で唯一「男女共同参画条例」の制定がされないなど、歴史の流れに逆行する県政運営が平然と行われている。そのような状況下において、今回正常な判断に基づく教科書採択が行われたことは、広範な市民・労働団体と連携しながら「教育の自由」を守るために全教千葉が運動を進めてきたことの大きな成果である。
また、この8月に6000人の参加で成功させた「教育のつどい2011」の力も大きかった。教育への不当な支配を許さず、教育の主人公は子どもであるという原則に立ち、すべての国民による協力と共同の力で震災後の日本を復興させるとともに、子ども達の健やかな成長と発達を願うという国民の声が集結した「教育のつどい」の成功が、県民の願いと結びついて今回の教科書採択における教育の正常化へ大きな流れをもたらしたものと考えている。
しかし本来であれば、教科書は児童・生徒の実態を最も理解している教職員・保護者がその実態に合わせた教科書を自由に選択することができて当然である。子どもが学ぶ教科書を選ぶことは、子どもの成長過程を大切にすることでもあり、子どもの未来に責任をもつということでもある。また、教科書を選ぶ過程においては、それを使う子ども自身の意志が十分に反映されるような仕組みを備えることも重要である。加えて、現行の教科書採択制度のあり方を問い直し、広く市民に開かれた「公正・公平・公開」の原則にのっとった採択の実現へ向けて改善要求をしていくことが欠かせない。
児童・生徒が使用する教科書は、その発達段階に沿って真理と真実が記述され、どの子にもわかるように十分吟味されて教材化されたものでなければならない。全教千葉は引き続き、教科書検定制度の問題点も明らかにしながら国民のための教育・学校づくりに全力をあげていく覚悟である。同時に、全国で行われている教科書採択の動向を注視しつつ、各教育委員会が現場教職員の声をふまえ、政治的な圧力に屈することなく、子どもを中心に据えた教科書採択を行うことを求めるものです。 以上
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