いよいよ、各地で教科書の採択がはじまっています。子どもと教科書全国ネット21(「子ども・教科書ネット」)常任運営委員会は各地の情勢を検討し、このままでは育鵬社・自由社教科書が採択される危険性が強まっていると判断しました。
日本教育再生機構=「教科書改善の会」や新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)、日本会議など右派勢力は、育鵬社・自由社教科書を採択させるために、国会議員・地方議会議員を使い、国会や地方議会を利用して、不当・不法な教科書攻撃や宣伝活動を展開し、それが、一定の「効果」をつくりだしています。
06年から扶桑社版歴史・公民教科書を採択してきた栃木県大田原市では、7月15日、育鵬社版歴史・公民教科書の採択を決めました。ここでは、調査委員会の報告は育鵬社で、採択協議会も全員一致で育鵬社となり、教育委員会では5対1で育鵬社に決まりました。
栃木県下野市では、16日の選定委員会で調査委員が「東書、教出、育鵬」の3社を推薦し、委員の中でも絞れないと報告したところ、一人の委員(校長)が、教育基本法の改定を受けた学習指導要領にのっとって、わが国の伝統を教える必要がある。また歴史上の偉人のことをキチンと教えるのは生徒の興味をひきたてるのに効果的な方法だ、東書と教出は聖徳太子の憲法は書いてあるが内容がほとんどふれられていない。二宮尊徳、勝海舟もないと発言し、たいした議論もないまま、その後非公開で投票し、育鵬社に決めました。しかし、21日の教育委員会では育鵬社教科書を推す教育長に対して、教育委員長はじめ委員から育鵬社を具体的に批判する意見が多く出され、育鵬社は採択されませんでした。
自民党本部が指令を出して地方議員を動かしています!
自民党は去年12月、地方組織に向けて「教育基本法と学習指導要領に最も適合した教科書が採択されるためには地方議会での取り組みが『死活的に重要』だ」という通達を出し、今年5月には「教育基本法および学習指導要領改正の趣旨を反映した採択への取り組みをすすめることは、教育基本法を制定したわが党の使命」であるとして、議会での一般質問と議会決議の文案まで提示して指示を出しました。さらに、日本会議地方議員連盟が6月4日に一般質問と議会決議の文案を発表し、地方議会での策動を指示しました。前述の下野市の選定委員の発言は、これらの指示内容に述べられていることとそっくりです。
これを受けて、各地の地方議会で一般質問に名をかりた育鵬社・自由社以外の教科書への攻撃と育鵬社・自由社教科書の宣伝、請願・陳情や決議の採択が行なわれ、判明しているだけでも14府県、16市町議会で請願や決議が採択されています。
これらは教育委員会に対する不当な政治的介入であり、教育基本法にも違反する不当な支配にあたるものですが、右派・改憲勢力はなりふり構わず策動を強めています。こうした動きが、各地で育鵬社・自由社教科書を採択させる条件づくり、雰囲気づくりになっていることは否定できない状況です。
こうした策動の背景には、大震災・大津波・原発事故という大変な状況を憲法改悪に利用しようとする右派政治家の動きがあります。
私たちの取り組みがまだまだ弱い!
一方、私たちの側では、横浜をはじめ、現在「つくる会」系教科書が採択されている地域や早くから「危ない地域」とみなされていた地域で多様な活動が精力的に取り組まれています。しかし、全国的には01年、05年に比べてまだまだ不十分な状況といわなければなりません。
「子ども・教科書ネット」が発行した10円パンフレット『子どもたちに渡せない 育鵬社版自由社版教科書』は7月20日現在で、まだ2001年と比べて約半数、2005年と比べて約1/3の普及・活用にとどまっています。各地での集会や学習会についても、「子ども・教科書ネット」への講師依頼は、01年の30%、05年の50%という状況です。
このように、現状は私たちの活動がまだまだ弱く、右派の策動に対抗して、「戦争美化・日本国憲法敵視の教科書NO!」の世論を地域に広めきれていない状況にあります。
それぞれの地域で状況をリアルに分析し、具体的な対策を!
こうした状況の下で、「つくる会」系教科書の採択を阻止し、子どもたちに渡さないためには、それぞれの地域の状況をリアルに分析し、対策を立てて具体的な対応をすることが求められています。その際、次のような点がチェックポイントです。
1.調査委員会や採択協議会、選定委員会などの一人ひとりの委員について、どれだけリアルに把握し、分析して対応してきたか、再確認しましょう。下野市のケースでは、まさに彼らの教育基本法と学習指導要領を利用した宣伝が「効果を発揮」したことが伺えますが、最後まであきらめないで教育委員会に働きかけたことが不採択につながりました。
2.採択制度がどうなっているか、再点検しましょう。調査委員会や選定委員会、採択協議会などの答申で育鵬社も自由社も入っていないとして、安心している地域もあるかもしれません。しかしそのような地域でも、教育委員会がその答申を尊重して採択するようになっているのかどうか確認して、最後まで油断しないことが重要です。
3.育鵬社・自由社教科書の問題点、年表や図版盗用、たくさんある間違いや不適切な記述・内容などについて、地域の人びとに知らせ、教育委員に伝えて、このような教科書として不適切なものを採択しないように働きかけましょう。
4.地域で様々な規模の集まりをもち、10円パンフレットをもっともっと積極的に活用しましょう。
採択は8月末までですが、その大半は8月の中旬までに決まります。今からでも遅くはありません。万一、育鵬社・自由社教科書が採択されれば、来年から4年間、子どもたちをはじめ、教員や保護者、地域の住民が苦しめられ、大変な状況になることは、横浜市や杉並区で経験済みです。
将来に悔いを残さないように、残された期間、全力をあげて育鵬社・自由社教科書を子どもに渡さない、採択させないために活動されるよう呼びかけます。
℡:03-3265-7606 Fax:03-3239-8590
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