公金詐欺や業務上横領などで逮捕された県職員は既に四人(うち三人に有罪判決)を数え、さらに四人を県が県警に告訴。最も悪質な私的流用に至らないまでも、職場に置く冷蔵庫や将棋盤、残業時の夜食代などを公金から支出していた事例も判明した。県民から「もう税金を払わない」などと苦情が相次いだのも当然だ。
県は不正経理の主な原因を「職員のコンプライアンス(法令順守)意識の欠如」と説明。十一月には特別監察などを担う「コンプライアンス推進本部」、外部の弁護士と公認会計士が推進本部への助言などを行う「コンプライアンス委員会」を設置するなど、再発防止に努めるとしている。
だが、長年の慣習や前例踏襲で、まひしてしまった職員の意識改善には、まだまだ時間がかかりそうだ。森田知事によると、今回の処分に対して「厳しすぎる。冷たい」との声も上がったという。
確かに、〇三~〇八年度の幹部職員は全員が組織責任を問われて戒告処分を受けるなど、全く不正経理にかかわっていない職員への処分には気の毒な面もある。しかし、「処分が厳しい」と感じる県民は皆無だろう。県庁内の“内向きの論理”は根強く生き残っていると言わざるを得ない。
森田知事は不正経理について謝罪するたび、「これを機に全部うみを出し、生まれ変わってやる」と繰り返してきた。だが、私的流用とみられながら使途が不明な部分は残っている。今回の調査は消耗品費などの「需用費」が主な対象で、調査対象になっていない費目に不正経理が潜んでいる可能性も否定できない。
書類が現存していない〇二年度以前については調査すらできず、不正経理が始まった時期は特定できていない。架空伝票を使って業者にプールした公金は約四億二千万円に上り、大部分の返還交渉はこれからだ。
二十二日の県議会の不正経理調査特別委員会では、ある委員が「問題は今始まったところだ」と述べた。二十四日の決算審査特別委員会では、複数の委員が「まだうみは出し切っていない」と口をそろえた。来年以降に持ち越された解明すべき問題、県民に説明すべき事項は山ほどある。
────(小林孝一郎)東京12/28────
千葉
信頼回復厳しい道のり 県の不正経理
イラスト・川田あきひこ 高級料亭でコンパニオンと食事をしながら、何を思っただろうか。週に1回以上の頻度で通い続けたと聞けば、県民から預かった公金に手を付ける罪の意識はなかったに違いない。「私たちはそこまでしていない」と反論する職員もいるだろう。だが公金に対する意識の低さで言えば、一部の職員に限った話ではない。
県の不正経理は組織的に行われ、2008年度までの6年間で総額36億6100万円に上った。卓球台や将棋盤など業務に必要ない物品を購入したほか、愛人との交際や料亭での飲食に充てた事例もある。この問題での処分者数は、全国最大規模の2245人。詐欺罪の有罪が確定した3人を含む計7人を懲戒免職にし、私的流用の疑いが強い4人を県警に刑事告訴するなど、県政史上前代未聞の大不祥事となった。
「私がこの業界に入った40年ほど前からあった。(取引業者に代金をプールする)『預け』というのは貯金のような感覚で……」。今年9月、業者と接触した際のノートに、こう記してある。20年以上、プール金を管理していた別の業者も、「県との信頼関係というか、絆(きずな)みたいなものだった」と癒着の実態を証言した。今回、県の調査対象に、02年度以前は含まれていない。「36億円」という巨額は、氷山の一角に過ぎないのだ。
なぜ、これまで明るみに出なかったのか。1997年1月、県職員労働組合に1通の投書が寄せられた。
「50億を楽に超える公費が乱用され、幹部職員の飲み食いに消えているだろう。これは立派な犯罪です」。職員を名乗る内部告発だ。議会でも問題になったが、県は「匿名」を理由に黙殺した。この時、県が実態調査に乗り出していたら、03~08年度に不正経理の金額が36億円まで積み上がることはなかったのではないか。
調査結果を公表してから、県に届いた怒りのメールや電話は2000件を超える。
「税金は私たちが汗を流して働いた大切なお金。返してほしい」「あなたたちは全員犯罪者です」。こうした声は、他県からも寄せられているという。納税者としては、公金を不正に扱うことや、そうした意識自体が許せないのだろう。
11月、再発防止のために開かれた県幹部職員向けのコンプライアンス(法令順守)研修会。約300人の幹部職員を前に、壇上で怒りのメールを読み上げた佐藤忠信・行政改革監は、人目をはばからず涙を流した。「誇りを持って仕事をしてきたつもりだが、メールを読んで情けなかった」。県が信頼を取り戻すためには、職員一人ひとりがその悔しさを忘れてはならない。
────(福井浩介)(2009年12月26日 読売新聞)────
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