2011年12月4日日曜日

大震災・安心の行方:放射性物質対策
手賀沼の下水処理場、苦渋の選択
────千葉────

◇濃縮招く焼却を避け、減量せず汚泥搬出へ 

 県管理の4下水処理場のうち、焼却灰の放射性物質の濃度が、国が埋め立て処理を可能とする基準(1キロあたり8000ベクレル)を超えている「手賀沼流域下水道手賀沼終末処理場」(我孫子市)について県は、焼却システムを経由せず、基準値を超えない脱水汚泥のままの状態で搬出できるよう、施設の改造を始めた。焼却システムはもともと、埋め立てスペースを省くなど環境保護の観点から導入されたもの。環境対策のために、元々ある環境対策の過程を経ないという皮肉な作業の一方で、汚泥や焼却灰の受け入れ先となる県内の管理型最終処分場周辺では、住民の不安が高まっている。県は各処分業者にさらなる情報公開を促すなどの対応にも追われている。【斎藤有香】

 県下水道課によると、同処理場は下水処理の際に発生する脱水汚泥の体積を小さくする焼却処理をするシステムを導入している。

 しかし、原発事故後の放射性物質測定の結果、脱水汚泥の放射性セシウムが同約200~600ベクレルに対し、焼却処理した灰は同約1万~2万ベクレルと約30~50倍まで放射性物質の濃度が濃縮され、結果的に、基準値を超え搬出できない状態が続いていた。焼却灰保管量は15日現在355トンで、10月中旬までに空きスペースが埋まる恐れがある。

 このため、県は7月中旬から、脱水汚泥を焼却処理する前に取り出す工事を始めた。工事完了は11月末だが、実施可能な範囲で、工事完了前から、順次、脱水汚泥の最終処分場への搬出を始める予定という。

 ◇情報巡り県苦慮 風評被害懸念、受け入れ先非公表 排出元や量などのデータ、HPで公開を指導 一方、下水道処理で発生する汚泥や焼却灰を受け入れる管理型最終処分場は県内に富津、銚子、君津の3市にしかない。県は県内の焼却灰や汚泥について県外に受け入れを求めず、基準値を下回るものは全てこの3カ所に搬入する方向で調整しているが、手賀沼の処理場から出る脱水汚泥の受け入れ先は未定だ。

 しかも、同処理場からは、脱水汚泥が焼却灰の体積の約30倍の1日150トンも発生するため、受け入れ先は1カ所だけでは足りない可能性もある。同課は「風評被害が心配なので、決まっても受け入れ先がどこかを明かせない。もし搬出ができなくなると、下水を使えなくなってしまう」と県民の理解を求めている。

 県産業廃棄物指導課によると、すでに他の下水処理場などから、基準値を下回る焼却灰を受け入れている君津市の管理型最終処分場では、市民団体から県と事業者に対し「受け入れ状況が心配なので情報がほしい」と要望が出ており、9月上旬、県が事業者を招き、住民に対し説明会を開いたという。

 一方で、県は9月28日、富津、銚子、君津3市の管理型最終処分場に対し、汚泥の排出元や放射線量、受け入れ量などをホームページ(HP)などで情報公開するよう行政指導した。

 風評を恐れ、搬入先を明かさない一方で、業者には情報公開を求めざるをえないという苦渋の対応だが、同課は「あくまで住民に安心してもらうため。安全に管理していることを情報発信し、理解を求めたい」と話している。

────毎日新聞 2011年10月2日 地方版────

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