2012年8月24日金曜日

大企業の工場撤退 立地補助金 返還相次ぐ
税金投入雇用・振興に役立たず
────千葉・茂原市 パナソニックなど────

    
  自治体が支出した立地補助金の一部を大企業が返還するケースが増えています。電機製造業などが赤字を口実に工場再編などを進め、立地から5、6年という短期間での生産縮小・撤退が相次いでいるからです。「地域経済の活性化につながらない」と、地元の日本共産党と議員団は補助金の返還に向け尽力しています。

 千葉・茂原市 パナソニック 液晶テレビのパネルを製造するパナソニック液晶ディスプレイの千葉県茂原市の工場は2006年5月、操業を始めました。前身は日立ディスプレイズの子会社(05年1月に設立)です。10年に日立がパナソニックに株式を譲渡しました。
 
 テレビの売れ行き不振による赤字を理由に撤退が決まりました。12年3月に工場は閉鎖され、別会社のジャパンディスプレイに譲渡されました。 
 
 同社には、県が「地元経済の振興」や「雇用確保」の名目で、50億円の補助金支出を決め、すでに06年の操業以降、20億3千万円を支出しました。市も40億円の補助金支出を決め、うち13億5千万円を支出しました。 
 
 県はパナ社の工場譲渡を受け、企業立地補助金のうち3億4千万円の返還を請求。パナ社もこれに応じ同額を返還しました。市は返還を求めていません。
 
 同工場の正社員は操業開始時からすべて親会社からの出向で、新規採用はゼロ。その後も正社員を減らして非正規社員に置き換えてきました。工場の従業員数も08年5月の約2400人から11年末には1330人と大幅に減少しました。
 
 パナ社は工場撤退に伴い茂原工場の正社員を兵庫県姫路工場に異動させましたが、少なくない人が退職に追い込まれました。期間従業員など非正規労働者は雇い止めされました。
 
 地域経済への影響も避けられません。茂原市はかつて、日立を中心に企業城下町として栄えました。ブラウン管工場などで働く人たちで商店街も繁栄してきましたが、現在は中心商店街の店舗数も激減。大型ショッピングセンターの郊外進出の影響もあって街は「シャッター通り」化し、にぎわいはありません。
 
 市の担当者も「(パナ社の)資産償却に伴う固定資産税の減少など市財政にも大きなマイナスになる」としています。 大企業の“食い逃げ” 許されるかリストラ野放しノー 市民と共産党各地で要求 撤退したパナソニックに対し、日本共産党千葉県議員団(4人)と茂原市議員団(2人)は、雇用の確保と企業立地補助金の返還を求めてきました。今年2月の県議会では、株売却や工場閉鎖など大企業の利益のための再編劇のたびに労働者の解雇や雇用条件の悪化が進んだと批判。県に対し、企業呼び込み競争施策の転換を迫りました。 
 
 補助金の交付にあたり、県は企業側があらかじめ提出した計画に基づいて10年間の操業を行うことを求める規定を設けました。しかし、県や市は企業に雇用を維持させるなどの権限はもっていません。
 
 日本共産党の平ゆき子茂原市議は「多額の税金をパナソニックに投入したものの、地域経済の活性化につながっていません。市は効果があったといいますが、地元の雇用に貢献せず、人口の減少にも歯止めがかかりません。結局、市がパナソニックのリストラの手助けをしただけではないですか。パナソニックは、すべての従業員の雇用を守る社会的責任を果たすべきです」と指摘します。 
 

 ────企業立地補助金────
 企業を誘致するために自治体が支出する補助金のこと。工場用地を整備したり、固定資産税や都市計画税を一定期間軽減したりする支援策などがあります。補助金の限度額は自治体ごとに決まっています。兵庫など「上限なし」の県もあります。高額な補助金で誘致した企業が自己都合により短期間で撤退し、雇用や地域経済に影響を及ぼす事例が増えています。

────赤旗5/18────

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