2012年4月21日土曜日

────千葉県:12年度当初予算案────
一般会計、最大規模1兆6001億円
税収減、財源確保に苦心

◇県債残高、2年で2419億円増へ

 県は7日、12年度一般会計当初予算案を発表した。総額は1兆6001億800万円で、11年度当初予算比2・6%増と、財政難が続く中で2年連続の増加となった。歳入では東日本大震災などの影響による県税の減収が見込まれる一方、歳出では、社会保障費など義務的経費の大幅な増加に加え、震災対応に217億7700万円の充当を迫られるなど、実質的な予算規模は過去最大となる。基金の取り崩しや退職手当債の発行で財源確保に苦心したが、県債残高は12年度末で2兆8658億円に達し、森田健作知事が初めて本格予算を編成した10年度(決算時)より2419億円(約9・2%)増える見通し。森田知事は記者会見で、今後の財政運営について「厳しいが、歳出抑制と同時に、積極的に企業誘致や観光アピールもして県経済を引っ張っていかなければいけない」と引き締めた。

【斎藤有香、味澤由妃】



◇歳入
 県税は、15歳までの扶養親族が扶養控除の対象から外れるなどして個人県民税が増えたが、震災の影響による消費の落ち込みで、地方消費税は前年度当初比67億円減、さらに急激な円高が企業収益を圧迫し、法人関係税も同35億円減。県税は全体で同46億円(0・7%)減の6295億円にとどまる見通し。
 地方交付税は、地方財政計画の伸び率を踏まえ、同80億円(4・8%)増の1760億円を見込む一方、国が返済を肩代わりする臨時財政対策債は同50億円(2・8%)減の1710億円だった。
 県債(借金)は、臨時財政対策債は減額となるものの、退職手当債が増額となり、同69億円(2・8%)増の2510億円。国庫支出金は、災害復旧事業や中小企業、グループ施設などの復旧整備補助金の増などにより、約26億円(1・6%)増の1609億円だった。

◇歳出
 主な施策として、入院医療費の小学3年から中学3年までの助成対象拡大に伴い59億2900万円を計上。震災対応として、液状化や津波などで被害を受けた住宅再建支援事業の2年間延長や、公私立学校の耐震化を前倒しした。

 義務的経費では、人件費が全歳出の約4割を占める。県人事委員会勧告に基づき給料などを減額したものの、職員の大量退職に伴う退職金の増額により、同約24億円(0・4%)増の5968億9900万円となった。高齢化の進展に伴う社会保障費の増加は、同218億円(11・1%)増の2169億9800万円でさらに加速。医療給付費の地方負担割合が引き上がったため、国保県財政調整交付金の大幅な増加も影響している。一方、投資的経費では、県立学校の耐震化など一部でメリハリをつけたものの、河川・海岸・道路・橋りょうなど多くの公共事業分野で削減が進み、全体では同約112億円(7%)減の1477億8800万円。

 借金返済に充てる公債費は、臨時財政対策債の増加などで、約62億円(3・6%)増の1802億3300万円。12年度末の県債残高は県民1人当たり46万7000円に相当し、昨年より2万円余増えている。

■解説 ◇ゆとりなし、政策の方向性示せるか

 任期満了を来年3月に控え、森田県政1期目の総仕上げとなる予算案は、子ども医療費助成で、入院助成の対象が中学校3年生まで拡大されるほか、私立学校の運営費補助が高校、幼稚園で上乗せされるなど、子育て世代に配慮した施策が並び「くらし満足度日本一」を目指し、財政安定と県勢拡大を狙う知事の姿勢がうかがえる。

 一方、歳入面では600億円ほどの財源不足が見込まれた。県は事業費の精査や、企業庁からの借入金返済を11年度に前倒しすることで歳入を確保すると同時に、基金などを廃止し、さらに退職手当債を発行して不足分を補ったが、12年度の自主財源比率は58・6%となる。

 県人口は一昨年の国勢調査では全国3位の増加数で、首都圏でも埼玉県を上回る好調ぶりだったが、震災による液状化や放射性汚染への懸念などが影響し、昨年は転出が転入を上回る「社会減」が1万人を超えた。

 長期計画より7年早く人口減少社会に突入した可能性もあり、今後、さらに財政が苦しくなることは必至だ。今年度も新規78事業(約150億円)のうち、県新エネルギー等活用推進事業など県単独分はわずか約18億円(42事業)どまり。予算のゆとりはますますなくなっている。

 限られた予算の中で、政策の方向性を明確にし、メリハリをつけた財政運営にスピード感を持ってあたれるか。待ったなしだ。

【斎藤有香】



◇12年度の主な新規事業◇

▽総合防災拠点基本設計業務委託事業 3000万円
▽外国人による千葉県体験モニターツアー・情報発信事業 2500万円
▽「がんばろう!千葉」有料道路利用観光振興事業 3200万円
▽「がんばろう!千葉」市町村復興基金交付金 20億円
▽障害者のための災害時防災拠点整備事業 7200万円
▽千葉県新エネルギー等活用推進事業 6000万円
▽河川海岸津波対策事業 11億円
▽水門操作遠隔化システム整備事業 3億円
▽災害に強いまちづくりマニュアル策定事業 1200万円

────毎日新聞 2012年2月8日地方版────

 

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